患者さん・ご家族等一般の方へ
痛み以外の症状について知りたい
痛み以外の症状にも「緩和ケア」
痛み以外にも以下のようなさまざまな症状が出現します。
- 食欲がない
- 吐き気がする
- お腹がはる
- 息が苦しい
- 咳が止まらない
- しゃっくりが止まらない
- 尿がもれる
- 尿が思うようにでない
- 身体がだるい
- 身体のあちこちがむくむ
- 何もする気が起こらない など
不快な症状のために仕事ができなくなったり、眠れなかったり、どうしてこんな目にあうのかという気持ちが起こることもあります。それは、自分だけに起こることではありません。
症状によっては薬剤調整や何らかの医療的処置を行うこともありますが、息切れ・息苦しさと、だるさ・疲れやすさに関してはリハビリテーションが有効な場合もあります。
どのような症状に対しても、痛みと同様に患者さんと相談しながら、チームでケアを行います。
「こんなことは相談しても仕方がない」と思わず、どんなことでも伝えてください。
緩和ケアには、それぞれの症状にあった適切な治療やケアがあります。
「つらいな」と思ったら、どんなことでも遠慮せずに緩和ケアのスタッフへ伝えてください。
食欲がない(食欲低下)について
- 食べたいものがない
- 食事がのどを通らない
- 食事が楽しめない
- 食べられないことが不安
上記のような生活への影響を感じることがあります。
参考資料:患者家族用パンフレット「食欲がないとき」
※患者家族用パンフレットに関するダウンロード以外のお問い合わせ(資材請求や転載等)は、作成元のOPTIM(がん対策のための戦略研究『緩和ケア普及のための地域プロジェクト』)へお問い合わせください。
吐き気や嘔吐(嘔気・嘔吐)について
- 食欲がない
- 口の中の不快感がある
- 疲れやすい
- 食べられないことで不安な気持ちになる
上記のような生活への影響を感じることがあります。
参考資料:患者家族用パンフレット「吐き気・嘔吐があるとき」
お腹がはる(腹部膨満感)について
- 吐き気がする
- 食事がとれない
- 腰が痛い
- 息が苦しい
- つらい気持ちになる
上記のような生活への影響を感じることがあります。
参考資料:患者家族用パンフレット「おなかがふくれる、張るとき」
便が出にくいとき(便秘)について
- 便が出ないる
- 残便感がある
- 便が硬い
上記のような生活への影響を感じることがあります。
参考資料:患者家族用パンフレット「便が出にくいとき」
息切れや息苦しさ(呼吸困難)について
- 長い距離が歩けない
- 息切れがする
- 食事、入浴、排せつにつらさを感じる
- 息が苦しくて不安な気持ちになる
上記のような生活への影響を感じることがあります。
参考資料:患者家族用パンフレット「息切れ、息苦しさに困ったとき」
からだがだるい、疲れやすい(倦怠感)について
- 日常の生活を送ることが難しい
- 集中できない
- 疲れやすい
上記のような生活への影響を感じることがあります。
参考資料:患者家族用パンフレット「体のだるさに困ったとき」
リハビリテーションについて
身体の症状は、リハビリテーション(主に運動)によって軽減できることがあります。息切れ・息苦しさ(呼吸困難)やだるさ・疲れやすさ(倦怠感)はそのうちの1つです。
ご病気や体の状況によって必要なリハビリテーションは異なりますが、主に有効とされているのは以下のような内容です。
- 有酸素運動
- 筋力トレーニング
- 活動量の管理(体を休める方法、体を適切に動かす)
上記に加えて、
呼吸困難には「呼吸トレーニング(腹式呼吸、口すぼめ呼吸)」
倦怠感には「マッサージ」
も有効である場合があります。
例)
抗がん剤治療中の副作用が強い、症状が増えてきた時期
→副作用や症状がある中でも楽に生活ができるようにする。
- 活動量の管理(体力を温存する、活動する量を調整する、リラックスして過ごす)
- 生活の中で楽に動ける方法の獲得(適宜休憩をする)
抗がん剤の副作用が落ち着いてきたり、治療がひと段落したりした時期
→症状を軽減するためには体の調子を戻しましょう。
軽く息が切れるくらいの運動が望ましいとされます。
- ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動
- 筋力増強トレーニング
- 趣味や日課を通じて体を動かす
どのようなリハビリテーションをするかは主治医やリハビリテーション専門医・専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の意見を踏まえて、相談しながらご検討ください。
ぐっすり眠れないとき(不眠)について
参考資料:患者家族用パンフレット「ぐっすり眠れないとき」
意識が混乱したとき(せん妄)について
せん妄とは、がん患者さんなどにみられる精神神経症状のことで、意識に障害をきたします。がん治療のどの段階でも現れる可能性があり、終末期に近づくにつれてより多くみられます。せん妄には以下のような症状がみられます。これらの症状は急激に現れ、夕方から夜にかけて悪化します。
<せん妄の症状>
- 意識がぼんやりする
- もうろうとして話の辻褄があわない
- 夜眠れない
- 不安で落ち着きがない
- 怒りっぽく、興奮する
- 日にちや場所がわからない(失見当識)
- ありもしないものが見える(幻覚)
せん妄になると、転倒や転落などのリスクが増えるだけでなく、入院期間の延長や認知機能の低下、さらには死亡率の上昇といった多くのデメリットをもたらします。また、せん妄はご家族にも大きな影響を与えることが知られており、患者さんとの意思疎通が難しくなることは、精神的な苦痛を深める原因となります。そのため、医療者は患者さんとご家族がこの困難な時期を乗り越えられるよう、適切な支援やケアを提供します。
参考資料:患者家族用パンフレット「意識が混乱したとき」
せん妄の正しいケア
「あれ?いつもと様子が違う」せん妄とは?
せん妄には、正しいケアがあります。
正しいケアは患者さんの安心につながります。
せん妄を正しく知って、一緒に患者さんを支えましょう。
家族ががんになったら知っておきたい緩和ケア
せん妄の予防・ケアについて
このマンガ動画では、がん治療中にせん妄を発症した男性の奥様を取り上げます。 せん妄とは、どのような症状なのか。ご家族はどのように対処し、緩和ケアはそのご家族をどうサポートするのか。こちらのマンガ動画をご覧ください。
令和3年度厚生労働省委託事業
患者さんが夜眠れないと、せん妄を発症しやすくなることが知られています。したがって、せん妄を予防する上で、不眠に対する薬物治療は有効です。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬はせん妄を引き起こすことがあるため、睡眠薬を服用する際には、身近な医療者に相談してください。
患者さんが時間や場所を認識しやすくするために、カレンダーや時計を置くのが有効です。また、慣れ親しんだ物品の使用、照明の調整、身体的苦痛の管理、早期の活動再開なども効果があるとされています。そのほか、患者さんが安心感を得られるためには、ご家族のサポートが大変重要です。ご家族が患者さんのそばにいたり声をかけたりすることで、せん妄による興奮や不安の軽減につながります。